毎年2月から3月にかけて、確定申告をします。会社員なので、副業もしていないし、特別な収入もない。それでも、医療費控除のために毎年確定申告をしています。
医療業界で働いている、というと意外に思われることがあります。「医療費なんて、そんなに使わないでしょう」と。
たしかに、職業柄ある程度の知識はあります。それでも、私と家族の医療費を合算すると、毎年そこそこの額になる——これが、続けている理由です。
医療費控除とは何か
簡単に整理しておきます。
医療費控除は、1年間に支払った医療費のうち、一定額を超えた分を所得から差し引ける制度です。差し引かれた所得分にかかっていた税金が、確定申告で戻ってくるという仕組みです。
ポイントは2つ。
一つ、自分一人の分だけでなく、生計を一にする家族の分も合算できること。配偶者でも、両親でも、子供でも、お財布が一緒なら一人分として申告できます。
二つ、年末調整では処理されないこと。会社員の場合、ほとんどの控除は年末調整でやってくれますが、医療費控除だけは自分で確定申告する必要があります。これを知らずに、控除を受け損なっている人は意外と多いと感じます。
"意外と含められる"もの
医療費控除というと、入院費や手術費といった大きな出費をイメージしがちです。私もそう思っていました。
でも、実際にやってみると、地味な日常の支出が積み重なるということに気づきます。
たとえば、市販薬。風邪薬、頭痛薬、胃薬、湿布、目薬。これらの一部は「セルフメディケーション税制」という別枠で控除対象になります。レシートを保管しておけば、年末に集計して申告できます。
それから、歯科医療費。これは見落としがちですが、予防や定期検診も控除の対象になります。虫歯治療だけでなく、歯のクリーニングや、お子さんの矯正治療(医療上必要と認められるもの)も含まれます。
このあたりは、「治療のための支出かどうか」が判断基準。美容目的のものは除外されますが、健康維持のための地味な出費は、思った以上に集まります。
マイナンバーカードで、手間が劇的に減った
数年前まで、医療費控除の作業で一番面倒だったのは、1年分のレシートを1枚ずつ入力する作業でした。
それが今は、マイナンバーカードを使えば、保険診療分は自動で取得できるようになりました。
仕組みはシンプルです。マイナポータルというサイトに、マイナンバーカードでログインし、「医療費通知情報」を取得すると、自分と家族(連携設定済みの場合)が1年間に病院や調剤薬局で使った医療費が、全部リスト形式で出てきます。
これを、確定申告(e-Tax)にそのまま連携できる。レシート入力の作業が、ほぼゼロになります。
私が初めてこれを使った年、それまで2時間かかっていた作業が、30分で終わったことに、地味に感動したのを覚えています。
ただし、注意点もあります。自動で取得できるのは保険診療分だけ。市販薬や、自費の歯科治療(セラミック治療など)、保険外の費用は対象外なので、レシート保管は引き続き必要です。
それでも、メインの医療費が自動入力されるだけで、心理的ハードルは大きく下がります。「確定申告って大変そう」と思っている人にこそ、一度試してみてほしい仕組みです。
レシートを"捨てない"だけ
やることは、極めてシンプルです。
1年間、医療費のレシートを捨てずに、一つの場所にまとめておく。
私はクリアファイルに「医療費」と書いて、引き出しの中に入れています。病院の領収書も、ドラッグストアの市販薬のレシートも、歯科のクリーニング代も、全部そこに突っ込んでおく。
ただし、保険診療分はマイナポータルで自動取得できるので、特に大事なのは「保険外」のレシートです。市販薬、自費治療、健康診断などのレシート。これらだけは、捨てないでおく。
12月になったら、マイナポータルから医療費通知情報を取得 + 保険外レシートを集計して、e-Taxに入力。慣れれば、年に1回・1時間程度の作業です。
"戻ってくる"より、"知っている"の価値
医療費控除で戻ってくる金額は、人によりますが、ふるさと納税ほどの大きなインパクトはないかもしれません。
それでも私が毎年やっているのは、「使える制度を、ちゃんと使っている」という安心感があるからです。
家計管理の話と通じますが、自分のお金がどこに流れているかを"見て"、使える制度を把握している——この状態を保っていると、お金との向き合い方が落ち着きます。「取り損ねがない」という静かな自信は、数字以上の価値があると感じています。
まとめ
会社員でもできる節税のひとつとして、医療費控除は地味だけど確実な選択肢です。マイナンバーカードの活用で、手間も以前より大きく減りました。
毎年2月、1年の医療費のリストを眺めながら確定申告をする時間は、自分の1年の健康と、家族の暮らしを振り返る時間でもあります。お金を取り戻すための作業のはずが、いつの間にか、暮らしの記録になっている——それも、悪くない時間です。